6月1日の抗加齢医学会専門医試験に向けてのお勉強を今日も続けています。
今回は今年の受験対策用講義を受けたので、そのポイントのまとめです!
2024年1月7日開催:日本抗加齢医学会研修講習会(基礎・受験編)
「晩婚・未婚が多い日本の女性の老化を考える」
★日本女性は昔と比較して、初経が早い。
・昔は栄養が悪いため初経が遅く(10代後半)、閉経は早かった。加えて、妊娠・出産の頻度が多く、授乳期間も月経が止まるため、一生の間に45〜50回の月経回数だった。
★現在の日本女性は一生の間に400〜450回の月経があり、昔の10倍の頻度となっている。
★現代の日本女性は昔と比較して閉経が遅い。しかし、長生きになったので、閉経から死亡までの期間は延長している。
★1950年代(70年前)は30歳で3人の子持ちが平均だったが、現在は30歳から産み始める。つまりプレコンセプション期(妊娠前の期間)が長くなっている。
★プレコンセプション期が長くなることで起こる一番の問題は「子宮内膜症」。
・現代人は月経の回数が増えて、 月経血が卵管を逆流して溜まり増殖することで、子宮内膜症が起こりやすくなっている。
・子宮内膜症とは、子宮内膜が他の臓器にできる病気である。具体的には、卵巣やダグラス窩、腸。 卵巣の子宮内膜症のことをチョコレート嚢胞と言う。
・ 子宮内膜症の症状: 癌化、月経痛、排便、性交痛、不妊、妊娠合併症、閉経後も脳梗塞等の原因になりうる。
・ 子宮内膜症の治療: 低用量ピル。 昔は休薬の必要があったが、今は連続投与で出血をしないものもある。
・体外受精(ART)は 日本において1年間で6万人、つまり12人に1人が行っている。
★ARTの 年齢別治療成績。 20代は妊娠率50%。対して38歳では妊娠率25%まで低下する。保険適用は43歳まで。その理由はこの年齢以降では流産する可能性が非常に高いためである。
★ 子宮内膜症の治療中や子宮全摘後は、閉経したかどうかを月経で評価できない。 このような場合はFSH(卵巣刺激ホルモン)値が40mlU/ml 以上かつエストラジオール(E2)値が20pg/ml以下 を持って閉経後と診断する。
「呼吸器からみたアンチエイジング」
★ 老化関連呼吸器疾患は、生理学的加齢に加え、外的障害因子による影響も大きい。
★COPD の約90%は、喫煙によるもので、全身炎症を惹起し、フレイルの原因にもなり得る。
★ 小児期の呼吸リスク因子(親からの受動喫煙)は、将来COPDになる危険が高い。
・喘息による死亡者数は1037人と減ってきており、COPDによる死亡者数が16127人と増加傾向にある。喘息による死亡者数の10倍である。
・ タバコに含まれる成分は、PM2.5で2〜3マイクロメートルのサイズの微粒子。このサイズの 微粒子は肺の奥深くまで入り込んでしまう。
★COPD 中等症とはどのくらいの症状か?: 中等症の閉塞障害はFEV1が 50%以上80%未満。 具体的な症状としては息切れがあるので、同年代の人よりも歩くのが遅い。あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時、息切れのために立ち止まることがある。
・ 吸入デバイスの吸入に必要な吸気流速はいろいろあるが、50以上あれば良い。60から90L/minあれば確実に使えるが、具体的には「蕎麦をすする強さ」「ジュースをストローで吸う強さ」に相当する。
・COPD患者における食事の注意点: 炭水化物の過剰摂取を下げて、脂質多めの高カロリー食にする。 塩分の摂取控える。骨粗しょう症予防に鈴とカルシウムを摂取する。食事量も減ってしまうことがあるので、オススメの食べ物はシュークリーム。シュークリームは脂質が多く炭水化物が少ない。
★COPDでは 慢性炎症がありCRPやIL-6が 高いが、 1日の歩数が多いほど炎症マーカーが低くなる。
「アンチエイジングドックとは」
・ アンチエイジングで評価すべき老化度: 筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢。
★ 骨密度の測定は超音波を使って踵で評価できる。 スクリーニングには最適だが、確定診断には使えない。
★ 演習問題
Q1: 血管年齢を上げる原因として誤っているのはどれか。
a. 加齢
b. 高血圧
c. 高血糖
d. 高脂血症
e. 有酸素運動
A1:e
Q2: 骨密度測定について誤っているのはどれか。
a. 腰椎ないし大腿骨のDXA法が標準である
b. 前腕DXA法や第二中手骨DXA法で診断可能である
c. かかとの骨を超音波 で測定するQUS法で診断可能である
d. 加齢と共に椎体の変形が出現するため、70代以降は腰椎より大腿骨で行うのが望ましい
e. 大腿骨のDXA法による測定部位は大腿骨近位トータルが国際的基準である
A2:c
Q3:加齢による 聴力低下について誤っているのはどれか
a.加齢による 聴力は、低音域の閾値上昇が顕著である
b. 動脈硬化と聴力低下に関連がある可能性がある
c.加齢 による聴力の高音域閾値上昇が顕著である
d. 騒音の暴露が最大の原因である
e. 高血圧や高血糖も、聴力低下に関連がある可能性がある
A3:a
「抗酸化によるアンチエイジング」
Take Home Message
★活性酸素と抗酸化システムについて
酸化ストレスとは、活性酸素の 消去に対して、活性酸素の発生が上回っている状況を指す。 生体には様々な抗酸化システムが備わっている。(予防的抗酸化物質、 連鎖切断型抗酸化物質)
★ 酸化ストレスと老化や老化関連疾患について
酸化ストレスは、老化の主要因では無い可能性がある。 抗酸化物質を用いた老化関連疾患の予防や治療の現状について出題するかも
★ モデル生物を用いた老化研究について
ハダカデバネズミは 独自の酸化ストレス応答機構 によってHealtyh Agingを実現している。
線虫 は 高等動物と類似した老化プロセスを持っている。(酸化ストレスによる寿命短縮と抗酸化物質による寿命延伸が 確認されている)
・連鎖切断型抗酸化物質の例: ビタミンE、 ユビキノール(還元型コエンザイムQ10)
・ 予防的抗酸化物質の例
金属イオンの 不活化: フェリチン、 トランスフェリン
スーパーオキシドの消去: スーパーオキシドジスムターゼ
一重項酸素 の消去: カロテノイド、 ビタミンE
過酸化水素の還元: グルタチオンペルオキシダーゼ、 ペルオキシレドキシン、 カタラーゼ
水溶性酸素ラジカルの消去: ビタミンC、 尿酸
・ ハダカデバネズミのもつ独自の酸化ストレス応答機構:
ゲノムDNAにおいて、酸化ストレスにより変異が誘発されやすい配列が少ない
タンパク質の酸化修飾により、変性や失活が生じにくい
種特異的なセロトニン代謝と過酸化水素への脆弱性が寄与し、生体内での老化細胞の蓄積を防ぐ。
「 心のアンチエイジングとポジティブサイコロジーの脳科学」
★ 自己効力感が高いと、疾病治療も成功しやすくなる。 特に生活習慣病、リハビリなどの慢性疾患の管理上は大変重要である。
・ 高い自己効力感は、良い禁煙治療成績の予測因子である。
・ 自己効力感を高める方法① 成功体験、② 代理体験(あの人ができたなら自分にもできるだろう)、③ 言語的賞賛(励まし)、④ 感情喚起
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