6月1日の抗加齢医学会専門医試験に向けてのお勉強を今日も続けています。
今回は今年の受験対策用講義を受けたので、そのポイントのまとめです!
2024年1月14日開催:日本抗加齢医学会研修講習会(基礎・受験編)
「腸内細菌叢と生活習慣病・がん」
Take Home Message
★肥満と腸内細菌: 産生する代謝物(短鎖脂肪酸など)を介して、抗肥満作用を有する腸内細菌がいる。
★発がんのイニシエーションと腸内細菌:発がんのイニシエーションは 持続する慢性炎症が、その要因の1つ、慢性炎症を防ぐ腸内細菌代謝物がある。
★進行がんの微小環境と腸内細菌: (研究報告)
★腸内細菌関連因子の肝移行と脂肪性肝疾患関連肝ガン:腸管バリアの脆弱化が進行癌の微小環境の抗腫瘍免疫を変える可能性がある
★ がん治療のためのセノセラピー:がん微小環境の 細胞老化を起こしたCAF(がん関連線維芽細胞)のSASP(細胞老化随伴分泌現象)を 抑制するセノセラピーが がん治療に有効である可能性がある。
★ 腸内細菌と免疫チェックポイント阻害剤: 免疫チェックポイント阻害剤の有効性を上昇させる腸内細菌の存在が示唆され、今後がん治療に併用される可能性がある。
・食物繊維を腸内細菌が分解して産生される”短鎖脂肪酸”が脂肪の蓄積を抑制する。
・短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)は抗炎症作用や肥満抑制作用がある。
・ 百寿者の便中には、特殊な二次胆汁酸(イソアロリトコール酸、3-オキソリトコール酸)が存在する。慢性炎症を抑制できる特殊な胆汁酸腸内細菌をもつ高齢者に百寿者が多い。
・SASP(細胞老化随伴分泌現象)とはもともとは癌を抑制する成分を出すが、出すぎると、なぜかがんを助長する成分を分泌する現象。
分泌物の例: 炎症性サイトカイン(IL-6,IL-1, etc)、ケモカイン(IL8,CXCL9, etc)、 細胞外マトリクスリモデリング因子(MMPs, PAI-1,etc)、増殖因子(HGF,PDGF,etc)
「 睡眠障害とアンチエイジング」
・ICD-10までは精神および行動の障害や神経系の疾患の一部として睡眠障害が扱われていたが、2019年にICD-11が発行された際に「睡眠・覚醒障害」は独立した章として作成された。
・睡眠によりアミロイドが排泄される。
★高齢になると深い睡眠が減り、早寝早起きになる。また、中途覚醒も増える。ただし、男女それぞれで見てみると男性のみ加齢に伴い深い眠りが減る。女性は変わらないかも。
★22時〜2時が「睡眠のゴールデンタイム」とよく言われるが、これは都市伝説!深いノンレム睡眠のときに成長ホルモンは分泌され、就寝時間との関係はない。
・メラトニンはトリプトファンから合成される。合成される場所は松果体。夜に光を見ると抑制されてしまう。高用量摂取しても安全と考えられている。
・メラトニンは睡眠リズムを整えるだけでなく、解毒や抗酸化作用、DNAのメチル化にも関わっている。
・深部体温が低下すると眠気が出てくる。就寝1~2時間前に40-42.5度の入浴orシャワーを浴びるとその後体温が下がり効果的。就寝1~3時間前が効果的という報告もある。
・ハーブティー(カモミール)は睡眠の質を上げるのに効果的。
★不眠症治療として「睡眠スケジュール法」がある。睡眠スケジュール法は意図的に睡眠時間を短くして、その時間に眠れたら徐々に睡眠時間を長くしていく方法。
具体的には 横になっている時間(床上時間)は10時間なのに、そのうち実質睡眠時間が6時間だとすると睡眠効率は60%と悪いため、床上時間を 実質睡眠時間+ 30分程度に設定する。睡眠効率が85%以上だったら床上時間を15分追加する。80%未満だったら15分短縮する。これを繰り返して適切な床上時間を見つける。
「骨年齢・骨粗鬆症」
Take Home Message
★脆弱性の大腿骨近位部骨折or椎体骨折の既往があれば即治療。椎体骨折の2/3は無症状であるため要注意
★診断、治療効果判定には腰椎、大腿骨骨密度測定が必要
★骨粗鬆症の治療目的は骨粗鬆症性骨折予防である
★骨折予防効果のある継続可能な薬剤選択と長期的なプランニングが大切。
★原則一生涯治療を続ける必要がある。
・骨強度=骨密度+骨質(微細構造、骨代謝回転、微小骨折、石灰化)
★原発性骨粗鬆症の診断基準
I.脆弱性骨折(注1)あり
1.椎体骨折(注2)または大腿骨近位部骨折あり
2.その他の脆弱性骨折(注3)があり,骨密度(注4)が YAM の 80%未満
II.脆弱性骨折なし
骨密度(注4)が YAM の 70%以下または-2.5SD 以下
YAM:若年成人平均値(腰椎では 20~44歳,大腿骨近位部では20~29歳)
注 1 軽微な外力によって発生した非外傷性骨折。軽微な外力とは,立った姿勢からの転倒か,それ以下の外力をさす。
注 2 形態椎体骨折のうち,3分の 2は無症候性であることに留意するとともに,鑑別診断の観点からも脊椎 X線像を確認することが望ましい。
注 3 その他の脆弱性骨折:軽微な外力によって発生した非外傷性骨折で,骨折部位は肋骨,骨盤(恥骨,坐骨,仙骨を含む),上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨。
注 4 骨密度は原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする。また,複数部位で測定した場合にはより低い%値または SD値を採用することとする。腰椎においては L1~L4または L2~L4を基準値とする。ただし,高齢者において,脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が困難な場合には
大腿骨近位部骨密度とする。大腿骨近位部骨密度には頸部または total hip(totalproximal femur)を用いる。これらの測定が困難な場合は橈骨,第二中手骨の骨密度とするが,この場合は%のみ使用する。表3に日本人女性における骨密度のカットオフ値を示す。
★原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準:骨粗鬆症の診断基準を満たすもの+「BMDがYAMの70%より大きく80%未満の場合→①大腿骨近位部骨折の家族歴、②骨折評価ツールFRAXの10年間の骨折確率(主要骨折)15%以上)」
・骨密度の測定:腰椎はL1-4の海綿骨の各椎体の平均から出す。大腿骨頸部は皮質骨、大腿骨近位部は海綿骨=皮質骨
・骨吸収マーカーはTRACP-5b、骨形成マーカーはP1NPやBAP
・骨粗鬆症の薬は基本的に骨吸収抑制する薬は骨形成も抑制してしまい、骨形成を促進する薬は骨吸収も促進してしまう。唯一抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)のみだけは骨形成は高め、骨吸収は抑制する。
・骨形成促進薬:副甲状腺ホルモン(テリパラチド)、活性型ビタミンD3製剤(エルデカルシトール)、ビタミンK2製剤、
・骨吸収抑制薬:抗RANKL抗体(デノスマブ)、ビスホスホネート製剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
「NAD生物学とアンチエイジング」
・カロリー制限は老化関連疾患を予防する
★カロリー制限の寿命延長効果を媒介する栄養応答シグナル伝達経路:サーチュイン、NAD、インスリン・IGF-1、AMPK、mTOR
★哺乳類サルベージNAD合成経路:NADは私たちの体ではビタミンB3(ニコチナミド)を材料としてNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)からNADに変換されます。ニコチナミドからNMNへの変換は臓器・細胞内と血液中の両方で行われ、臓器・細胞内の変換酵素はNAMPT、血液中の変換酵素はeNAMPT(細胞外型NAMPT)と呼ばれる。このNAMPTがサルベージNAD合成経路の律速酵素である。
・NAMPTは老化に伴い低下し、その結果NADも低下する。老化によりNAD分解酵素(PARPsやCD38)は増えるためダブルパンチ
★NMNは細胞内、血液中でNRに変換されたり、NRからNMNに戻ったりする。このNMNとNRがNAD合成を促進させる中間代謝産物である。
★NMN/NRは老化関連疾患を予防・治療する(マウス実験での報告)。 2型糖尿病、慢性腎臓病、肥満、サルコペニア、難聴、動脈硬化、心不全、アルツハイマー病など。
「医療への遺伝子解析技術の導入」
★遺伝性早老症と原因遺伝子
・Werner症候群:WRN(RECQL2)ヘリカーゼ遺伝子。遺伝子の機能は組み換え修復。
・Hutchinson-Gilford症候群:LaminA遺伝子。遺伝子の機能は核膜裏打ちタンパク質。
・Cockayene(コケイン)症候群:CSA遺伝子、CSB遺伝子。遺伝子の機能は転写共役型DNA修復。
・Bloom症候群:BLM(RECQL3)ヘリカーゼ遺伝子。遺伝子の機能はDNA修復酵素。
・Rothmund-Thomson症候群:RTS(RECQL4)ヘリカーゼ遺伝子。遺伝子の機能は DNA修復酵素。
・色素性乾皮症:XP遺伝子。遺伝子の機能は DNA修復酵素。
・毛細血管拡張性失調症:ATM遺伝子。遺伝子の機能は 細胞周期チェックポイント制御
・Down症候群:第21番染色体トリソミー。原因遺伝子不明。
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