日本抗加齢医学会研修講習会(基礎・受験編)2024/2/18開催分試験情報まとめ

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6月1日の抗加齢医学会専門医試験に向けてのお勉強を今日も続けています。
今回は今年の受験対策用講義を受けたので、そのポイントのまとめです!

2024年2月18日開催:日本抗加齢医学会研修講習会(基礎・受験編)
「カロリー制限・飢餓とアンチエイジング」
・食事制限によりインスリン・IGF1系やmTOR系の抑制、またはAMPKやサーチュインの活性化が起こる。
★成長ホルモン(growth hormone;GH)/インスリン様成長因子1(insulin-like growth factor 1;IGF-1)/インスリンシグナルは通常,糖代謝や脂肪蓄積の亢進などを調節している。GHは下垂体前葉から分泌され,成長ホルモン受容体(growthhormone receptor; GHR)に結合し、JAK2を活性化し、IGF-1の発現を増加させることで、その分泌を促進することが知られている。インスリンは血糖値の上昇に応じて分泌され,肝臓や脂肪組織などに発現しているインスリン受容体(insulinreceptor; IR)と結合し、その下流シグナルを活性化する。また、IGF-1も食事などにより肝臓から分泌され、肝臓や脂肪組織のインスリン様成長因子1受容体(insulin-like growth factor 1 receptor ;IGF-1R)に結合しインスリンと同様に下流のinsulin receptor substrate 1 (IRS1) Pinsulin receptor substrate 2(IRS2)/AKTを介してmammalian target of rapamycin (mTOR)シグナルを活性化し、栄養センシングに重要な役割をもつ。これらの細胞内シグナル伝達系は、生物種を越えて高度に保存されており、カロリー制限によって調節される抗老化シグナルとしても重要であると考えられている。カロリー制限のように栄養状態が負に傾いている場合は、AMP活性化リン酸化酵素(AMP-activated kinase; AMPK)などの分子が活性化され、不足しているエネルギーを産生する機構が活性化されるとともに、オートファジーを活性化させることが知られている。これらのことから、カロリー制限による寿命延長効果に重要な細胞内シグナルとして、mTORシグナルの阻害がカギとなることが、さまざまな遺伝子改変動物の研究から明らかとなっている。また,これらのシグナル伝達経路に存在する分子は、カロリー制限の効果を模倣する効果が期待されている、ラパマイシン、メトホルミン, nicotinamide mononucleotide(NMIN)などの物質の標的としても注目されている。

・カロリー制限の弱点①:高齢になってからのカロリー制限はむしろ危険。高齢者(75歳以上)のカロリー制限はフレイルおよびサルコペニアを助長してしまう。
・カロリー制限の弱点②:骨粗鬆症、易感染症、空腹感、生殖機能への影響
・CALERIE2 study(-25%のカロリー制限を2年間)の結果では、ヒトでのカロリー制限で免疫力が落ちると思われたが大丈夫だった。(ワクチン遅延性過敏性皮膚反応でCRによる影響なし、CRP,白血球数、TNF-α、リンパ球などは減少)
・カロリー制限では筋肉量と骨密度が低下するため、運動療法を併用することが有用と考えられている。
・カロリー制限はDNAメチル化の進行を抑制する(変化量を減少させる)。DNAメチル化は細胞年齢のバイオマーカーであり、DNAメチル化が少ないほど若い。
★様々な食事制限の方法
 ①カロリー制限:ずっとカロリーを少なめにする
 ②ADF(Alternative day fasting):1日ごとに自由摂食→絶食→自由摂食→絶食を繰り返す。
 ③TRF(time-restricted fasting):1日の間で8時間だけ食べても良い。残り16時間は絶食。
 ④PF(periodic fasting):5日間自由摂食、2日間絶食。
・SGLT2阻害薬は有望なカロリー制限ミミック
・ラパマイシンは免疫抑制剤であるため、カロリー制限としてそのまま使用できない。
・レスベラトロールはサーチュイン促進剤であり、Autophagyを促進し、抗老化を促す。
・Spermidine(精液から発見されたポリアミンに分類される有機化合物)は細胞内の機能維持に必要な物質で、抗老化作用を示す。

「認知機能の加齢による変化」
・認知症と異常蛋白蓄積
 アルツハイマー病:アミロイドβおよびタウ
 レビー小体型認知症:αシヌクレイン
 前頭側頭型認知症:タウおよびTDP-43
 血管性認知症:特異的なものなし
 神経原線維型認知症:タウ
 嗜銀顆粒性認知症:タウ
 大脳辺縁系優位型TDP-43脳症:TDP-43
★認知症の前段階である軽度認知機能障害(MCI)の段階においてさえ、脳の病理でAβ+タウ(2種類)のみは4割、さらにαシヌクレインも加わった3種類が2割、さらにTDP-43が加わった4種類すべてあるものが2割認められる。なので、シンプルなアルツハイマー病ではない認知症も多いということ。

「女性の健康と漢方〜更年期を中心に〜」
・女性の3大処方は「当帰芍薬散」「加味逍遙散」「桂枝茯苓丸」。桃核承気湯(61)も覚えると便利。更年期、月経前症候群(PMS)、月経困難症に使用可能。これらの症状は東洋医学的には「瘀血(おけつ)」にあたり、血の巡りが悪く、精神身体症状(不眠、嗜眠、不穏、顔面の紅潮、筋痛、腰痛など)をきたしている状態。
・当帰芍薬散→桂枝茯苓丸→桃核承気湯の順でより虚証→実証に効く。加味逍遙散はまんべんなく気血水に作用するイメージ

・当帰芍薬散:血虚+水毒、冷え性、めまい、無力様体質が診断のポイント。やせていて顔色が悪い、むくみやすい、肩こり、動悸、胃内停水音、腹部軟弱といった症状あり。
・加味逍遙散:多彩な愁訴・寒熱交錯、心気症的傾向、瘀血の証+胸脇苦満が診断のポイント。不眠、イライラ、肩こり、腹壁は全体に軟弱、ときに腹部へ軽度の抵抗圧痛
・桂枝茯苓丸:冷えのぼせ、瘀血症状、少腹鞭満、瘀血の圧痛点があるのが診断のポイント。頭痛、のぼせ、肩こり、腰痛、腹部は割に緊張が良い、へそから下に2横指・左に2横指の部位に抵抗圧痛あり(瘀血圧痛点)、下腹部全体に軽い抵抗、足は冷えるが特徴。
・桃核承気湯:実証で瘀血症状、少腹急結、のぼせと精神不安定が診断のポイント。頭痛、のぼせ、顔に赤黒いにきび吹き出物、肩こり、腰痛、めまい、耳鳴り、腹部全体の緊張良好、下腹部は硬満気味、著明な圧痛(少腹急結)、月経異常、便秘、足の冷えが特徴。成分として「大黄」と「ぼう硝」が入っており、下剤効果がある。
・元気にする漢方(補剤・補腎剤):六君子湯(人参が入っているので胃腸を整えて元気にする)、補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯。
・六君子湯はグレリン分泌促進により食欲が増え、抗炎症作用や心血管保護作用がある。
・補腎剤の八味地黄丸は老化に伴う諸症状(冷え、痛み、むくみ、しびれ)を改善する。これの強力バージョンが牛車腎気丸(タキソールのしびれ対策として有名な漢方)
・抑肝散はもともと子供に使う薬(小児の夜泣き、癇癪)だった。今は成人にも頻用。

「アンチエイジング医療を始めよう」
・緩やかな糖質制限:糖質量の目安が70-130g/日以内。
・厳格な糖質制限:糖質量の目安は30-60g/日以内。このレベルではケトン体が検出される。主なエネルギー源が糖質から脂質へシフトする。ケトン体は抗酸化物質としても働き、ケトジェニックな状態は長寿に関与する。
・ご飯茶碗1膳(150g)の糖質量は58.9g。緩やかな糖質制限をするなら1食あたりの主食量はごはん半膳(70g)、6枚切りのパン1枚、うどん1/2玉まで。
・がんは糖分・塩分・牛乳・炎症が好き。糖質制限、減塩、オメガ3系油(魚油、しそ油、えごま油)を取るとよい。
・ミトコンドリアの劣化を防止するサプリ:NMN、5-ALA(アミノレブリン酸)
・安定性の問題からNADよりNMN内服が一番良さそう。NADの点滴は副作用が大きい(寿命を短縮する)と考えられ、学会から使用しないよう声明が出されている。

「性ホルモンと骨粗鬆症」
・閉経すると破骨細胞の働きが骨芽細胞の働きよりも大きくなり、骨密度が低下する。
・骨粗鬆症治療薬のビスホスホネートで薬剤関連顎骨壊死を起こしうる。また非定型大腿骨骨折(転子下、骨幹部)も起こしうる。特に休薬中に骨折リスクが上がる。

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