今後、新規クリニック開業は好きな場所でできなくなるかもしれない!?

事業・開業

今回は「今後、新規クリニック開業は好きな場所でできなくなるかもしれない!?」と題しまして、数年後のクリニック新規開業についてのお話です。
今回の情報は医歯薬ネットで見たものになります。医歯薬ネットとは医者の新規クリニック開業を支援する会社で、クリニック開業予定の医師や開業後の意思に向けた情報発信をYouTubeで行っています。毎週金曜日にYouTubeが更新されるのですが、今回は特に興味深い話があったので、ここで取り上げることにしました。

昨今、「医師余りの時代がやってくる」と言われていますが、「実は地域や診療科単位で見ると医者不足が続いている。むしろ悪化している分野がある」のは周知の事実かと思います。
勤務医でも地域枠を利用して、これからは都会(特に東京)にばかり医者が集まらないように医者を地域限定の資格としていくような流れが既に起こっています。また診療科毎のアンバランス(首都圏の形成外科医局や皮膚科医局が人気で、地方の外科がほぼ入局なしといった状況)についても、専攻医の受け入れ人数上限を国が設けることで是正しようとしています。
今後は頭が良い人間や能力の高い優秀な人間が形成外科や皮膚科、放射線科になり、人気診療科の競争に勝てなかった人間が余っている不人気な診療科の専攻医になるというアメリカンスタイルが当たり前になっていくのでしょう。

このような流れは勤務医だけ、若い医師・医学生の話だけかと思っていましたが、なんと同じような流れが開業医でも今後起こるのだというのが今回のお話です!

お話は厚生労働省の作成資料「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」という資料をもとに展開されていきます。
https://www.mhlw.go.jp/content/000550063.pdf

ここで今後新規開業する先生には、国から「その地域に開業医が溢れているか不足しているのか」について情報提供する。そして、「開業医が多い地域の場合は、他のエリアでの開業を促す」ところまでセットです。もし、それでもそのエリアで開業したいなら「そのエリアで足らない診療科、足らない分野の業務を中心に働いてもらう」のだそうです。以前これを強制する計画も提案されたのですが、それは法曹界から「憲法違反だ!」と言われ、撤回されたそうです。

というわけで、今回は法的な縛りの無い「お願いベース」の計画になります。「これでは骨抜きではないか?」と思いますよね。でも、続きがあるんです。
なんとその新しいクリニックが国から出されたこのような「開業医が余ってるから開業しないでほしい。この診療科が足りないから、この業務をやってほしい」と言ったリクエストに対して拒否したかどうかの情報を金融機関・薬局・医薬品卸業者といったクリニックに関連する業種がすぐ見ることができるよう環境を整備すると言うのです!
つまり、「新規開業するクリニックが国の求める条件を満たしていない場合、それをわかった上で協力したらどうなるかわかってるな!」と言う脅しです。周りにプレッシャーをかけ、外堀を埋める作戦なのです!
「もしあの新しいクリニックと契約を結ぶようだったら、うちはもうお前のところから物を買わないぞ。」と既存のクリニックから言われたら、どの関連会社も既存の客を手放してまでこれからうまくいくかどうかわからない新しいクリニックと手を組むことはないでしょう。

このシステムは本当に腹立たしいものです。
確かに人気のエリア(開業医自身にとって都合の良いエリア)にみんなが開業したら、そのエリアばかり医者が溢れてしまって、結局現在のような医師の偏在が起こり、地方の人々が困ってしまうのはわかります。ただ、このシステムは既に開業している人間にとっては参入障壁が新たに設けられることになりウハウハな状況です。

いつも割りを食うのは若い世代。
様々な調整は全部若い世代に尻拭いさせ、既得権益を守る。
シルバー民主主義のこの国では、今後も同じような対策がなされていくのでしょう。

愚痴を言っていても仕方ないので私たちにできることを考えましょう。
1つはこの計画が実行される2027年までに滑り込みで開業してしまうこと。
もう1つは医者不足のエリアで開業すること。
「自分が都内に住みたいから東京で開業する」といった激戦区に飛び込むスタイルを止めて、「田舎なのは気に食わないけども需要のあるエリアで開業する」ということです。
私の感覚からすると、現時点でもその作戦のほうが良いように思います。特に保健診療は「診療報酬」という形で1人の患者から得られる売り上げが全国どこへ行っても同じです。であるならば、家賃や人件費といった固定費が安く済むエリアで開業した方が絶対にお得なのです。この辺は自分の気持ちとの折り合いというのはあるでしょう。

そして、最後にまだ専門科も決まっていないような若い人だったら、「ニーズを見据えて診療科を選ぶ」ということです。それこそ今回の話は基本的に箱物の一般内科開業医をターゲットとしているような話であり、在宅診療に関してはむしろ推進していく流れがあります。少なくとも当分の間は在宅医療でこの様な制限は発生しないのではないかと思われます。
そしてもう一つのポイントはこの在宅診療においても診れる分野を広げておくということです。
例えば、褥瘡の対応など本来皮膚科が担うべき領域であっても、在宅医療の範囲で広くマスターしておくことによって、制限が設けられてもニッチなニーズの部分で開業する事はできるでしょう。開業してしまえば一般内科的な仕事も徐々に拡大していけるのですから、まずは参入することが大事です!

医歯薬ネットはこれらの対策のうち、最初に紹介した「滑り込みで早く開業する」というスタイルをお勧めしています。だってそりゃあ、開業支援会社ですからね。
それぞれのポジショントークがあることを理解した上で、あなたの将来を考える参考にしていただければ幸いです。
ではまた。

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