肝膿瘍と肝臓がんの鑑別

仕事

今日は救急外来勤務日でした。救急外来ではなるべくその場で診断を付けたいものの、そこまでたどりつけないケースも多いです。今回は肝膿瘍と肝がんのお話。

肝酵素と炎症マーカーの上昇があり、クリニックから70代の患者さんを紹介されました。腎機能が悪かったため、造影CTを取ることできず、単純CTを撮影しました。
CTでは肝臓の主題と複数の低濃度域を認める状況でパッと見た印象は多発肝転移です。ただ炎症も高く、熱もある状況なので肝膿瘍も否定できないと判断し、抗生剤投与で入院としました。

毎度肝膿瘍なのか肝がん(転移を含む)なのか悩むんですよね。しかも、こういうときに限って脱水の影響なのか腎機能も悪くて造影CTが撮影できないということも多いです。

これを機に、肝膿瘍と肝がんの鑑別について改めて勉強してみました。
まず一般的に言われる鑑別方法は血液検査(肝炎ウイルスマーカー、腫瘍マーカー)、画像診断(超音波検査、CT,MRI,血管造影)、肝生検などです。ただ救急外来で出来て当日結果が得られるものとなると、超音波検査とCT(±MRI)しかありません。やはり、当日鑑別するのは難しいのか…。

結論、画像診断だけで判断するのは難しいという結論になりました(泣)
そもそも肝膿瘍の原因として胆道系悪性腫瘍が約27 %,転移性肝癌が約 3 %を占めるとの報告があり、肝胆道系のがんと肝膿瘍が両方とも存在する可能性があるため、鑑別する以前に重複しているかもしれないと考えるべきのようです。
また、画像検査についても超音波検査で転移性肝癌に特徴的とされるbull’s eye sign を肝膿瘍が示す場合があるという報告や,造影 CT で転移性肝癌に特徴的なリング状造影効果を肝膿瘍でも54 %程度認めるとの報告もあり、画像から見分けることもやはり難しいようです。
結局のところ、治療的診断として肝膿瘍が疑われる部分をドレナージして膿瘍が得られるかどうか、その検体にがん細胞がいるかどうか病理検査を待つしかなさそうです。

ということで今回のまとめ

1)そもそも肝がんが原因で肝膿瘍になっているかもしれない。
2)造影CTや超音波検査で肝がんに特徴的と言われる画像だとしても肝膿瘍のことはある。
3)肝膿瘍が否定できないなら積極的にドレナージを行い、病理検体を出して鑑別する。
4)腫瘍マーカーの提出やその他精査で胃がんや結腸がんなど肝転移の原発巣を同定する。(原発が他にあれば多発肝転移の可能性が高まる。ただし、肝膿瘍併発もありうるので注意)

肝転移がある状況では凝固異常があり易出血傾向であるためドレナージをためらうこともありますが、大きな肝膿瘍の場合、抗生剤だけでは太刀打ち出来ないのでリスク承知で刺すしかないかもしれないですね。
ではまた。

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